イマイマココニ

ワタシガイマシタ

風邪でもがっつり食べる人の食欲をまるでなくした精神的ダメージってすごいなっていう話

 サラダ少々とマルゲリータ一切れしか食べれないで終わったディナーが、既にその影響を受けていた。

 ホテルのベッドで店を調べていた時、こんなことになるなんて一粒も思っていなかった。レストランに入る直前、街を歩いていた時、ふと入った雑貨屋の下りのエスカレーターで、人生で一番悲しい時間の開始のゴングが鳴ったのだ。

 サラダは、その人が取り分けてくれた分をなんとか食べた。その後悲しみの余り食が進まない私の目から涙がこぼれないうちに、店を出ようと残り5切れを急いで食べたその人が苦しそうにしていたのを覚えている。

 その人は私が最初に頼もうとしたクランベリージュースを頼んでいたが、気が付くと既に飲み干していた。私は自分が頼んだパインジュースを半分あげた。

 ディナーの後、悲しみと話し合いの繰り返しを経て、ダブルベッドの隅と隅で眠ることになった。何度も目が覚めた未明。近づこうとしては躊躇い離れていくその人の気配が、現実だったか夢だったかは定かではない。

 

 その翌昼に栗菓子と抹茶。栗のアイスクリームを一口。

 翌翌昼に寝床で栄養食品を半分。起きられないままタピオカミルクティー小。

 その夜、麻婆豆腐を一口、白飯を一口、味噌汁を一杯、シウマイを一口、洋梨を一口、林檎を一口。食べる気は起きなかったが、少しでも食べざるを得ない状況にて。

 翌翌翌昼に仕事の合間にフライドポテトを3本。ファストフードを残したことなんてなかったのに。

 そしてその夜、マルゲリータから3日目にしてようやく、ネギトロの細巻きを2本、ブロッコリーを3切れと葡萄10粒を食べることができた。相変わらず食欲は機能していないが。

 

 人はまず空気と水がないと生きていけず、ある程度なら食べなくてもやっていけるという話題をよくきくが、それを実感した3日間だった。いや、食べてはいたけど。

 このまま、いつもの食欲が戻ってきてくれることを切に願っている。