イマイマココニ

ワタシガイマシタ

いくつもの夜の話

 印象的だった夜がいくつかある。

 

 

 3月の屋久島、森のロッジ、を抜け出して向かった小川、が近い森の中、闇、空と木の黒の違い、月、耳の寒さ、静けさ、友人の呼吸、目の慣れ、星、星、星。

 

 翌年の3月、土佐山、土砂降り、杉林の斜面、寝袋、ブルーシートの屋根。斜面を上ったところにある資料館、の駐車場の隅、屋根の端の下、横向き、目の前にコンクリート、この森に10人ぼっち。

 

 数年前に住んでいたシェアハウス、自室、窓際のベッド、仰向け、白い天井、黄色いタオルケット、桃色のカーテン、の隙間、窓越しに眺める降り続く雨、白む空を照らす街灯、が差し込む4畳、大きくはないのに響く風の音。

 

 

 明細さは失われているだろう。自分勝手な脚色が加わっているだろう。けれども。切り取られたいくつもの「あの夜」たちは、私の中に残り続けている。