眼鏡と階段の話
「なんで声かけてくれないの」
知り合いから、そう声をかけられることがある。ほぼほぼ眼鏡の時だ。
私は視力が悪く、外出には(もちろん家の中でも)眼鏡かコンタクトが必須である。毎日コンタクトをつけると眼が痛むので、日常的には眼鏡をかけている。
コンタクトに比べると、眼鏡をかけている時、はっきりと見える範囲が狭い。何かあるか何があるかを認識することはできるが、その詳細を把握するためには視野の中心にそれを捉えなおす必要がある。
特に階段を下りる時、視野の中心には階段の縁をロックオンし、踏み外さないようにすることだけに本当に集中しているので、上がってきてすれ違う人の顔が知り合いかどうかなんてほとんどわからない。
気づくようにと声をかけてもらっても、止まれないし止まったら危ない。
「さっきすれ違ってたんだよ」
と、願わくば、後でこっそり教えてほしい。話したくないわけではないので。